海と日本公式サイトの最新ニュースをウィジェットで埋込み

<iframe class="uminohi-widget official-newest" src=" https://uminohi.jp/widget/newest/" width="100%" height="800" frameborder="no" scrolling="no" allowtransparency="true"><a href="https://uminohi.jp">海と日本PROJECT【日本財団】</a></iframe><script src=" https://uminohi.jp/widget/assets/js/widget.js"></script>

新しい漁師像を発信する三陸の推進パートナー、フィッシャーマン・ジャパンとは

いま漁師はカッコよく稼げて革新的。未来の水産業を提案する若手漁師集団が子ども向け絵本も制作!

2020.11.05

震災をきっかけに知らない者同士が地域の未来を考える仲間に。

みなさんは、漁師さんや漁業・水産業にどんなイメージをお持ちですか?
宮城県に「カッコいい漁師集団がいる」と聞きつけて、海と日本プロジェクトinみやぎがフィッシャーマン・ジャパンを取材したのは2017年。(→記事はこちら
そして2019年には、東京・中野の直営居酒屋「宮城漁師酒場 魚谷屋」で海プロとコラボしたコースターやポストカードなどのPRツールを展開するなど、連携活動にも取り組みました。

今回ご紹介する宮城県石巻市の推進パートナー、フィッシャーマン・ジャパンは、「漁業のイメージを、カッコよくて稼げて革新的な“新3K”に変え、次世代へと続く未来の水産業の形を提案していく」と謳う、注目の若手漁師集団です。
その立ち上げからのメンバーである津田祐樹さん、島本幸奈さんに、水産業への課題や思いなどを伺いました。

旬の魚を食べられる宮城漁師居酒屋 「魚谷屋」へ取材に行きました!
旬の魚を食べられる宮城漁師居酒屋 「魚谷屋」へ取材に行きました!

震災をきっかけに知らない者同士が地域の未来を考える仲間に。

フィッシャーマンとは、漁師や漁協、魚屋など水産業に携わる人たちを指す総称で、フィッシャーマン・ジャパンは、「未来の世代が憧れる、真にカッコよくて稼げるフィッシャーマンとなり新しい水産業の形を提案する」取り組みを続けている団体です。
具体的には、漁業・水産業のPRや、水産業の担い手育成セミナーやイベントの開催、魚の売買から飲食店の運営なども行なっていて、ときには漁師や漁協でのワークシーンに適したおしゃれな高機能ウェアをアパレルメーカーとのコラボで開発したり、今年は子ども向けの絵本も制作。さまざまな角度から水産業を盛り上げる活躍ぶりは、県内外から注目を集めています。
新しい漁師像を発信する三陸の推進パートナー、フィッシャーマン・ジャパンとは
こうした数々の取り組みを「楽しんでやっています」という津田さんに、2014年の設立の背景を伺ってみました。
「震災から3年後でしたが、直接的な復興活動のためではありませんでした」と前置きして、震災をきっかけに水産業が抱えていたいろんな問題が顕在化したのだと話しはじめました。
「水産業は、“他を出し抜いてより早く良い漁場を見つける”ことが生きる術でもあったんです。だからか同業者に声をかけないという不文律みたいなものもあって、同じ地区の同業者でも接点がありませんでした。そんなところへ震災復興のために入ってきたヤフー株式会社の社員さんが、復興活動を続けるなかで『あちこちの浜で同じようなことを言っている人がたくさんいるよ、みんなを集めたら化学反応が起きるんじゃないか、力をあわせて何かやろうぜ』と、まったく知らない人たちを引き合わせてくれたんです」と、最初のきっかけを教えてくれました。

安売りするために魚を取り過ぎている!?伝えるべき水産業の危機。

そして公共物である海を借りて営む漁業は、一人がルールを乱せば地域全体がダメになること、自分たちが継続的に稼いでいくためには地域全体の環境をよくしていくことが近道だと気付いていったのだとか。
津田さんが現状の問題点のひとつと指摘するのは、安く売るために魚を取り過ぎている点。本来、魚はきちんと管理すれば2〜3年でまた増える。「世界的食糧難が起きたら、油田レベルで貴重な資源になるはず」と熱弁します。
にもかかわらず、日本では適切に管理された水産物に付けるMSCマークなどのエコラベルもまだ浸透していない状況。そんなジレンマを抱えつつ、こうしたことが理解されるには時間がかかるのだと続けます。
「20年程前、ap bankやパタゴニアが起こした、エコはクールでカッコいいというムーブメントを知る世代が消費の主役になった今、エコがやっと浸透してきました。そう考えるとやはり若い世代に伝えることが重要なのだなと、今回の絵本制作に至りました」

想像以上に難しかった絵本制作。子どもたちの反応は新しい学びに。

絵本『さかながいなくなっちゃうって!?』は、街に住むさとしくんと、港町に住むいとこのなぎちゃん一家の交流を通して、日本の海や魚の現状を伝える内容です。読み応えがあり大人が読んでも興味深い内容です。「海の資源を守る大切さを、わかりやすい平易な言葉で書くのが大変でした」と津田さん。「表現を間違えると、資源を守れていないのは漁師の責任だと受け取られかねない。漁師も魚屋も消費者もみんなが責任を担っているのだと伝わるように、最後の最後まで議論して調整しました。びっくりするくらい難しかったです」と絵本づくりを振り返ります。
想像以上に難しかった絵本制作。子どもたちの反応は新しい学びに。
島本さんも、「小学校から子どもたちの感想集が送られてきたんです。幼稚園の先生が読み聞かせをしている写真が添えられたお礼メッセージも届いて、ありがたかったですね。子どもたちから率直な意見がもらえるのは嬉しいですし、私たちの学びにもなりました」と感慨深げな様子。
そんな絵本の第二弾については、「次は絵本ではなく、もう少し上の世代に音楽やファッションなど異なるアプローチをしてみたいです。そして『サステナブルシーフードを食べるってカッコいいよね』というムーブメントを起こしたいですね」と津田さんは意欲的でした。
想像以上に難しかった絵本制作。子どもたちの反応は新しい学びに。
今回の絵本については、市販はされず、希望があった教育機関団体などへの配布のみとしています。石巻市の幼稚園・保育園、約60校に寄贈されたほか、ステイホーム期間中の「泳げ!みんなのお魚プロジェクト」に応募いただいた宮城の子どもたちにもプレゼントされました。
制作に関わった協力企業との完成披露イベントが中止になってしまったのが残念ですが、残り部数の配布についても現在、検討中だそうです。

全国のフィッシャーマンたちと一緒に取り組んでいきたい

最後に、お二人それぞれに海への思いを伺ってみました。
島本さんは、「ここで漁師たちと出会って感じた海の魅力を、少しでも多くの人に届けられたらと思います。私自身、子どもの頃に農業に触れた機会はあっても、水産業には触れたことがなかったなと改めて気づいたんです。子どもの頃に触れずに育つと「知らないこと」になってしまうということも知りました。今は、近くで見たからこそ知れた海の課題もあるので、未来のためにできることを続けていきたい」と体験して抱いた思いを教えてくれました。

一方、津田さんは、「僕は日本の海には産業としての優位性があるなと感じていて。日本は世界的に見ても魚種が多くとれる国です。製造業のような技術移転や流出もない、他国が真似できない強みになるはず。これを生かしていくべきだと思うんです。それに全国で漁業が活性化すれば地域経済もよくなります。食文化や産業を守るためにも、大切にしていきたい」と、生産者としての思いを明かしてくれました。

「今後も海プロと一緒に取り組んでいけたらと思っています。自分たちのエリアで解決できないことも全国で協力できるでしょうし、新しい生活様式が生まれるタイミングなので、みんなでもう一度、海のことを考える機会があれば」と津田さん。そして「みんなでで一緒に何かできるといいですね」と全国のフィッシャーマンたちへのメッセージも寄せてくれました。
全国のフィッシャーマンたちと一緒に取り組んでいきたい
全国のフィッシャーマンたちと一緒に取り組んでいきたい

リッチでカッコいい憧れのフィッシャーマンたちの今後の取り組みから目が離せません。