第30回 海辺の教室 in熊本・八代~球磨川河口干潟で多世代で語り合う、人と生きものと海のつながりの未来~を開催しました!
九州大学大学院工学研究院附属環境工学研究教育センターは、福岡と熊本で環境を学び活動するユースたちの交流を目的に「第30回 海辺の教室 in 熊本・八代~球磨川河口干潟で多世代で語り合う、人と生きものと海のつながりの未来~」を開催しました。
2024.03.15
九州大学大学院工学研究院附属環境工学研究教育センターは、福岡と熊本でそれぞれの環境を学び、活動するユースたちの交流を目的として、2024年2月17日(土)に『第30回 海辺の教室 in 熊本・八代 ~球磨川河口干潟で多世代で語り合う、人と生きものと海のつながりの未来~』を開催いたしました。
本ツアーでは、第28回海辺の教室(https://umitsunagi.jp/report/1778)の関連イベントとして、前回に引き続き、共催者に次世代のためにがんばろ会が運営するエコユースやつしろ(熊本県八代市)を迎え、福岡県立新宮高等学校(福岡県糟屋郡)と九州大学の生物研究部野鳥班の学生が参加し、球磨川河口干潟での自然観察とユースの交流、河床掘削事業の残土を活用しその環境を造成する国土交通省九州地方整備局八代河川国道事務所の取り組みについて学びました。
このイベントは、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。
開催概要
第28回海辺の教室(https://umitsunagi.jp/report/1778)の関連イベントとして、福岡と熊本のユースの交流と、球磨川河口干潟での希少鳥類のクロツラヘラサギや渡り鳥の生息環境を中心にした自然観察。球磨川の治水目的の河床掘削土砂を自然再生に活用した河口干潟再生についての勉強会。
日程
2024年2月17日(土)7:30~17:10
開催場所
球磨川河口干潟・桜十字ホールやつしろ
参加者
31名(福岡21名/熊本10名)
共催
次世代のためにがんばろ会・エコユースやつしろ(https://www.ganbarokai.net/)
協力
八代市教育委員会(https://www.city.yatsushiro.lg.jp/list01587.html)
国土交通省八代河川国道事務所(https://www.qsr.mlit.go.jp/yatusiro/)
八代野鳥愛好会(https://yatsushiro-birdclub.com/)
福岡県立新宮高等学校(https://singu.fku.ed.jp/Default2.aspx)
【自然観察会】渡り鳥の越冬地に訪問
朝7時30分に福岡を出発し、貸切バスを使い3時間をかけて八代へと向かいました。
午前の部は、球磨川河口干潟にて八代野鳥の会会長の高野茂樹氏にご指導いただき野鳥観察を体験しました。特に、希少鳥類のクロツラヘラサギは、世界でも6000羽程度しか生息していない鳥で、絶滅が心配されており、アジアの国々で国際的な一斉調査が行われています。大陸で繁殖し、海を渡って九州に飛来するクロツラヘラサギが安心して生息できるような環境を、私たちは保全しておかねばなりません。福岡の博多湾の干潟や河口にも、この鳥は飛来しますが、数は多くありません。球磨川河口は、この鳥の国内最大級の生息地となっているので、良好な環境が保全されていると考えてよいでしょう。特に、植物が生えている河口砂州の小島という条件を、休息場として好みます。今回、球磨川河口で9羽のクロツラヘラサギが観察できたのは、まさにそういった環境でした。
参加した福岡の高校生にとっては、干潟での野鳥観察は初めてでした。双眼鏡の使い方などに戸惑っていましたが、エコユースやつしろのメンバーが手慣れた手つきでサポートをしてくれる様子が伺えました。八代の方々には、鳥が鮮明に視えるプロ用のフィールドスコープをご準備いただきました。
観察会の時間帯では、クロツラヘラサギ、ヒドリガモ、マガモ、カルガモ、オナガガモ、カワウ、アオサギ、コサギ、アオアシシギ、ズグロカモメ、ミサゴの11種が観測できました。
野鳥観察のサポーターとして参加した九州大学生物研究部野鳥班の学生は、「野鳥との距離が近いわりにリラックスしている様子が伺え、一度にたくさんの鴨類も見れた。」と球磨川河口干潟の感想を述べました。
自然観察会の会場は、球磨川流域の河床掘削事業で生み出される土砂を活用し、干潟の造成を行っていますが、塩湿地の植物が茂り、ハクセンシオマネキなどの干潟の生き物も観察することができました。
【交流会・講話】干潟も砂浜もキーワードはエコトーン
午後の部は、八代市内にある桜十字ホールにて講義室をお借りし、講話と交流会を開催しました。
講話の一人目は、国土交通省九州地方整備局八代河川国道事務所 流域治水課の向田課長より、『球磨川河口のヨシ原再生』についてのお話をいただきました。
講話に耳を傾ける新宮高校の生徒は、普段干潟の環境とは全く異なる白砂青松の自然海岸で海浜の生物調査を行っています。向田氏の話では、より豊かな自然環境を育成するためには水辺までなだらかな斜面が続く『エコトーン』の大切さを語り、新宮海岸では海岸浸食の影響で浜崖ができている現状を思い出し、これからのフィールド観察のヒントを得ている様子でした。
続けて八代野鳥愛好会の高野会長からは、長年かけて蓄積してきた球磨川河口干潟における野鳥の飛来数の変動を用いてご説明いただくなど、美しい写真やイラストを交えて野鳥の研究をご紹介をいただきました。
話を聞いたユースたちは、野鳥への関心を深めただけではなく、高野先生からにじみ出る探求心や、データーの取り方、まとめ方、卓越した発表の手法など、普段から研究発表の場に立っているユースだからこその発見があったようです。
参加した高校生の声
(自然観察会の感想)
・鳥の観察や生物の観察ができ良い経験になった。
・こんなにもたくさんの鳥たちが生まれ育った八代へ渡ってきているんだと驚くと同時に感動した。
・人から聞いて知識として知っておくのと、自分の目で実際に見て経験するのとでは全く違うんだなと実感した。
・少しじっくり見たりお話を聞いたりしたかった。
(講話・交流会の感想)
・頑張っている同世代の人たちと交流できて良い刺激になった。
・講話はお二方とも面白く、たいへん勉強になりました。
・行政からの環境へのアタックと、それを支えるフィールドのプロの方々、どちらか一方だけでは成り立たないのだなと実感。
イベントレポートは実施事業者からの報告に基づき掲載しています
参加人数:31人