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ヨコハマ海洋市民大学2025年度講座第4回「港を楽しむ歩き方 生き物観察と港にまつわるエトセトラ」を開催しました!

ヨコハマ海洋市民大学実行委員会は、令和7年9月13日(土)に横浜の海が抱える社会課題の解決に挑戦する市民を養成する、ヨコハマ海洋市民大学2025年度第4回講座「港を楽しむ歩き方 生き物観察と港にまつわるエトセトラ」を開催いたしました。このイベントは、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。

2025.11.05

ヨコハマ海洋市民大学2025年度講座第4回「港を楽しむ歩き方 生き物観察と港にまつわるエトセトラ」を開催しました!

イベント概要

・ヨコハマ海洋市民大学実行委員会は「横浜の海が抱える社会課題を自ら考え、解決できる市民(海族・うみぞく)」を育成するヨコハマ海洋市民大学2025年度講座の第4回目を開催した(年10回開催)。
・開催日時:令和7年9月13日(土)10:00~
・開催場所:真鶴港・港喫茶ペペコーヒー(神奈川県足柄下郡真鶴町)
・参加人数:14名(会場受講生7、講師1、ゲスト・スタッフ3、実行委員3)
・共催:海と日本プロジェクト
・後援:横浜市・海洋都市横浜うみ協議会

講師紹介

水井さんは、海洋生物学の博士としての専門的知見を背景に、海洋教育と海と持続可能な地域づくりの現場で活躍する実践者です。2011年には横浜国立大学発のソーシャルベンチャーとして特定非営利活動法人ディスカバーブルーを立ち上げ、以来「いつまでもこの海と暮らしていくために」をテーマに、海の自然や生態系と触れ合い海の価値を実感できるプログラムを展開しています。活動は神奈川県真鶴町などの沿岸地域を中心に、ビーチコーミング、磯の生物観察など、実際に海とふれあうプログラムが特徴です。
※特定非営利活動法人ディスカバーブルー ホームページ https://www.discoverblue.org/
今回はスペシャルゲストとしてディスカバーブルー顧問の渡部孟さんにもプランクトンの観察指導に参加していただきました。渡部さん(ふだんは渡部先生とお呼びしています)は中学校の理科の教員を退職後、真鶴町教育委員会の事業として「海の学校」を立ち上げ、小学校等を対象として磯の生物観察指導をはじめられ、そこで水井講師との協働がスタートしています。その後、真鶴町立遠藤貝類博物館の館長を務められ、現在はディスカバーブルー顧問として磯での観察や指導に活躍されています。

はじめに

今回の講座は天気予報もころころと変わり、雨の様子を見ながらの講座となりました。座学→プランクトン採集と観察→港をあるいて視察の予定で始まりました。
「港は生物のオアシスだ、と言うことを知ってほしい」という講師の言葉から講座が始まりました。また部屋から外をみるときの「窓」のようにいろいろな生物が見られるけれども、さらには生物学的・生態学的にも意味のある場所だと感じて欲しいと講師は語ります。また社会と海との接点でもあり地域の産業やそれにともなう港の使われ方なども感じてもらい、横浜の港についても想いを馳せてもらうのが今回のねらいのようです。
今回受講生が感じているだろう疑問にも触れてくれました。「ヨコハマ海洋市民大学なのに、なぜ真鶴港?」という疑問ですね。ひとつはあまりにも横浜港が大きいこと、港湾施設を見た後に水に触れられる場所で生物観察しようとすると移動だけで講座の時間を消費してしまうこと、民間企業の所有地が多くは入れいこと。またSOLAS(海上人命安全)条約による規制があり一般人が立ちれない場所が多く存在すること、水辺といっても安全のための柵がほとんどの場所に設置してあり近づけないことなどに触れていました。神戸港や清水港には柵(手摺)がほとんどないそうです。
今回の真鶴港はSOLAS条約の規制対象になっていないため禁止されている場所以外は自由に見ることができます。


和やかに始まりました

講師スライドより

港について

「さてその港ですが、神奈川県にはいくつの港湾があるかご存知ですか?」と講師からの質問です。前回の講座では国際戦略港という名称を学びました。なので横浜、川崎は間違いないのですが…あと県内で大きな港と言えば横須賀港…と考えていると回答が示されました。川崎・横浜(国際戦略港湾)、横須賀(重要港湾)、さらに葉山、湘南、大磯、真鶴(地方港湾)の7港です。
こうやって教えていただいて、改めて港湾をウィキペディアで検索するとたくさんの港の種類が記載されています。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B8%AF%E6%B9%BE
小田原と真鶴を比べると小田原の方が大きいように感じるのですが、小田原は漁港で真鶴が地方港湾ですね。この部分は港湾法によるものです。さらには漁港が26ありそれぞれの種別が定められていました。これらの港湾は国土交通省、漁港は水産庁の管理となっています。
そんな真鶴港は真鶴半島があるおかげで南風が遮られる静かな港です。漁港として古くから利用されており、地元産出石材を運び出すためにも使われていました。古くは平安時代からの記録があり、江戸時代の1644年の資料には港として真名鶴港として記載され、昔から物流でも活躍しています。このエリアを豆相(ずそう)と言う地名も使われていました(豆相海浜浦々図)。古くから産出される石材の積出港として、さらに近辺を通過する船の風待ち港として、またブリを中心とした漁業の港として栄えてきました。当時は花街も形成されていたようです。明治維新以降東海道線が開通しますが、大正9年の熱海線開通までは国府津から御殿場に向けて現在の御殿場線ルートが東海道線でした。そのため海沿いの移動は国府津から船で行われていました。国府津から小舟で沖に停泊する汽船に乗り換え小田原・真鶴・熱海・伊東という航路がありました。さらに昭和9年には岸壁が整備され海軍や陸軍が必要とする石材の搬出が行われていたそうです。現在の真鶴港は石材搬出と漁業を中心に活用されています。そのほか県営・民営のマリーナもあります。


【昔の真鶴写真】

【昔の真鶴写真2】

明治~大正期の写真が映し出され現在との比較をしました。貴船神社が現在よりずっと下がった海岸にあり驚きましたが、現在の位置へ移転された理由は関東大震災の津波による流出だということでした。海辺のまちは津波との闘い(防災)も重要課題ですね。


【真鶴港管理業務対象図】

【真鶴港施設平面図】

現在の港としての管理対象と使われ方の説明が続きます。港湾としての真鶴は目の前にある港だけではなく、さらに南の琴ヶ浜まで港湾地域として遊歩道なども整備されています。
平面図上での解説では魚市場としての利用、漁船(大小、各種あります)の利用、網干場としての利用、遊漁船での利用、賑わい施設(飲食店)の利用などが行われています。駅から降りてきて正面にある岸壁は耐震岸壁として整備され災害時に活躍してくれる予定です。ただ普段は着岸する船は多くなく、釣り人が利用しているようですが、港湾施設だと理解していない(釣り専用だと勘違い)釣り人が船の着岸に文句を言うなど本末転倒なことも時にはあるようです。平面図の右橋にある縦一文字のものは港の入り口で波とうねりを防いでくれる防波堤です。この港の利用に関しては水井講師の講座ならではのオフレコ話がいくつもあり、感心したり頷いたりと楽しい時間でした。
町内の美味しいお店の紹介や有名な貴船祭りのお話もありました。
最近はキハダマグロ!!が定置網に入って活気づいていたり、刺し網漁のイセエビ、漁師さんが潜って取るサザエ漁なども行われています。


【生態学的に見た港の機能】

【みなとみらいのクラゲ】

講師の「港で生き物探しをするのが大好きです」と言う言葉で講座は進みます。とくに夜が面白いそうです。暗いので安心して岸壁に寄ってくるようですね。スライドでは静穏海域の形成・漁港がたくさんあることで小さな生き物のゆりかごになってくれる、付着基盤の構築・特に砂浜に港を作ることでたくさんの海藻、貝・フジツボ等が付着する場所になる、環境の多様性向上・生き物の種類や生息数が増えたり、砂が滞留したり藻場ができたりなどたくさんの港があることの良い影響について語られました。さらには私たち海族としても「観察・採取・実験・飼育」の場を提供してくれます。講師も博士論文のための研究素材をここで採取していたそうです。


【山下公園の稚魚】

【クロシタナウミウシの幼生】

港があることで大型魚が入ってこられず安全な環境が作られること、また多様な生物をはぐくむ機能からこれまで見なかったクロシタナウミウシの幼生をみなとみらいで見ることができたなどの事例が紹介されました。今年のみなとみらいや大岡川の岸壁はミドリイガイや緑色のアメフラシ(不明)が多かったようです。
沖縄の港に使われている消波ブロックにはたくさんのソフトコーラルが定着し、他では見られないくらい多様な種類の魚が港周辺で確認されるとの事です。


【真鶴夜の採取・アオリイカの子】

【秋口・3歳のお子さんによる釣りの成果】

プランクトン採集

講師は講座中も雨レーダを見ながら状況を判断してくれていました。「ちょっと30分くらい雨がやみそうなので、港にプランクトン採集に行きましょう!」と会場を出て港に向かいました。今回の講座が始まるとき「これまでの講座ではプランクトンを見てもらうことはあっても採集したことはないですよね?じゃんけんで負けた人は海に飛び込んで採集して来て下さい。」とみんなを笑わせていましたが、ちゃんとプランクトンネットが用意されています。渡部さんの指導でプランクトンネットの使い方や採集の方法を学び、それぞれ挑戦していました。ネットが水面から出てしまったり、深いところに沈んでしまったりとなかなか難しいようです。今回は水面下30センチくらいのところを3回ほど繰り返して採集してきました。その間も岸壁をのぞき込んで盛り上がる受講生も。採集が終わるころ再び雨が強くなってしまったので、港内の視察は中止し、講座会場にもどりそのままプランクトン観察を開始しました。


【採集中の受講生】

【採集したプランクトンを容器に移します】

プランクトン採集

講座会場にもどると講師からの質問です。「プランクトン、プランクトンと言っていますが、プランクトンってなんですか?」。今回初めて参加された受講生が「大きさとか…小さい生き物ですよね?」と答えると答えると「罠にはまっていただいてありがとうございます」と講師が笑わせます。
これは今年度1回目でも学んだことですが、プランクトンは「浮遊生物」とも呼ばれ「水の中を漂いながら生活している生物、泳ぐ力の無いもの」のことです。ここには植物プランクトンも動物プランクトンもいます。ちなみに大きくてもクラゲは自力で泳ぐことができないので動物プランクトンです。大きさではありませんでした。「ちなみに人間も海に落ちたらプランクトンです。」と言うジョークで次へと進みます。


【海の生き物は3グループに】

【第一次、第二次生産者のプランクトン】

陸上では草や木が栄養をつくり(生産者)、動物(消費者)に食べられ循環しますが、海では植物プランクトンが非常に小さく固いため、大きな生き物(魚)が食べても消化できません。植物プランクトン(一次生産者)を動物プランクトン(二次生産者)が食べ、これを魚や他の生き物(消費者)が食べると言う循環になっています。


【様々な植物プランクトン】

【地球上で一番多い生き物のカイアシ類】

植物プランクトンは光合成をして有機物を生産しています。動物プランクトンは植物プランクトンを食べほかの生物のエサになりますが、貝やカニなど底生生物(ベントス)の幼生なども一時的に海中をただよう動物プランクトンに分類されることもあります。
写真にある動物プランクトンのカイアシ類はその全体重量を算出するとどの生き物よりも多く、地球上で一番多い生き物なのだそうです。


【壁面いっぱいのプランクトン】

【全集中の観察時間】

スライドプロジェクターを使用し壁面に大きくプランクトンを映し出し観察を始めました。小さな粒粒の動くものが動物プランクトンです。ちいさいけれどたくさんいるカイアシ類のほかにもクラゲがいたりホヤのこども、エビやカニも幼生なども観察することができました。
このあと別室に移り事前に用意していただいた顕微鏡(40倍・100倍)で観察します。顕微鏡の使い方からプランクトンの観察まで渡部さんが担当してくれました。小さな丸いお皿に取り分けたプランクトンをまんべんなく観察できるような観察方法を教えていただき、それぞれが自身のスマホで撮影して楽しく学びなした。

終わりに

研究船に乗り沖合でプランクトンを採集すると今回の比ではない量のプランクトンが採集でき、さらにたくさんの姿を見ることができます。また季節によっても随分と違うものが観察できるそうです。沿岸でよく目にするプランクトンとして夜光虫が紹介されました。海が赤く染まってしまうやつです。昼間は汚く見えますが、夜間発光するときは幻想的です。夏に海が濁って見えるときは海が汚いのではなく実際にはプランクトンが大量発生していて「海は食べ物がいっぱいのスープ」な状態だと紹介されました。港の係留ロープにたくさんついたフジツボが触手を伸ばしプランクトンを摂取しているスライドでは「彼らはエビ・カニの仲間だけれど、なにかに固着して動かず生活することを選びました。それでも生きていけるくらい海中はプランクトン(食べ物)にあふれているということです。まぁ、人間でいえばコタツから一歩も出ずに生活できるってとこですね!」と笑いを誘います。


【海岸の波打ち際で光る夜光虫】

【船の係留ロープに着いたフジツボ】

この後プランクトンの生息分布について、その理由となる陸から海への栄養供給について、海水温の上昇している現状や海中の栄養状態と下水処理などの話と続きました。このあたりは今年度第1回目の講座振り返りにも記載がありますのでそちらをご覧ください(ヨコハマ海洋市民大学のHPから)。


【社会的課題の解決】

【いま、すべきこと】

そして繰り返し講師が伝えたいのは「公共物である『海』のことが国民・社会に知られていない」これこそが社会的課題なのだと言うことです。そのために海洋リテラシーの向上が必要とされています。この社会課題を解決するため自分自身で「何をすべきか」「何ができるのか」を考え、周りを巻き込み議論をし、実際の行動へ移してほしいと講座を締めくくりました。最後に「雨が降ってしまい、ぜんぜん港歩きができなかったなぁ」という講師のぼやきで笑いと拍手が起き今回の講座が終了しました。

参加者の声

・港の機能にも地域特性あり、横浜の港について考えるいい機会になった。
・これほどたくさんの種類のプランクトンが簡単に観察できると思わなかった。
・港湾管理者と利用者(市民・町民)間の相互理解も必要なのだと分かった。

<団体概要>

団体名称: ヨコハマ海洋市民大学実行委員会
URL: https://yokohamakaiyouniv.wixsite.com/kaiyo/
活動内容: 横浜市民が横浜の海が抱える社会課題を自ら考え解決に向けて行動できる海族(うみぞく)になるための養成講座を年10回(コロナ禍以前は年20回)開催している。座学だけではなく実際に海や海を学べる野外講座も開催している。

日本財団「海と日本プロジェクト」
さまざまなかたちで日本人の暮らしを支え、時に心の安らぎやワクワク、ひらめきを与えてくれる海。そんな海で進行している環境の悪化などの現状を、子どもたちをはじめ全国の人が「自分ごと」としてとらえ、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくため、オールジャパンで推進するプロジェクトです。
https://uminohi.jp/

参加人数:14人