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トップシェフの伴走で海と食を学ぶTHE BLUE CAMP<助成事業者インタビュー>

漁場から厨房まで。日本のトップシェフの伴走で3ヶ月学び抜いた学生たちがレストランを開店。

2023.10.05

トップシェフの伴走で海と食を学ぶTHE BLUE CAMP<助成事業者インタビュー>

2023年8月、東京と京都で6日間限定のサステナブルシーフードレストランが開店しました。
レストランの企画運営を担ったのは、夏の3ヶ月間「THE BLUE CAMP」に参加した学生たち16名。それぞれのお店で、自分たちが立案し調理したメニューを味わってもらいながら、海や魚の現状や水産資源を守る取り組みなどもお客さまにお伝えしていきました。

このTHE BLUE CAMPは、日本財団 海と日本プロジェクトの助成事業のひとつで、企画・実施したのは、トップシェフたちが集まり海の未来を考えようと活動しているChefs for the Blueです。

シェフたちがメンターとして学生に伴走しながら、オンライン講義や産地フィールドワーク、レストラン研修を経て、ポップアップレストランを開店させるという今年初の企画で、メンター役は、東京チームは石井真介シェフ(シンシア)、米澤文雄シェフ(ノーコード)、京都チームは坂本健シェフ(チェンチ)と前田元シェフ(モトイ)という、いずれも一流レストランのシェフたちが担いました。

「初の試みだったので、走りながら考えていった部分があり、学生やスタッフの作業量が増えたという反省点もありました。同時に手応えを感じた点も大きかったので、すべて来年度のプログラムに生かしていきたいです」と振り返る、キャンプ長を努めたChefs for the Blue代表理事・佐々木ひろこさんにお話を伺いました。

Chefs for the Blueが手掛ける、学生と一緒に海の未来を考えるプログラム

Chefs for the Blueは、2017年にスタートした深夜の勉強会を起点とする料理人チームです。フードジャーナリストとして日本の水産資源の現状に危機感を抱いた佐々木さんが呼びかけ、東京のトップシェフ約30名が集まり、2021年には京都チームも発足。勉強会だけでなく、現在は自治体や企業との協働プロジェクトやフードイベントなどさまざまな活動を行っています。

これまでのイベントは大人を対象にしたものでしたが、THE BLUE CAMPは若い世代と一緒に海の未来を考えるプログラム。シェフたちの全面サポートのもと、参加した学生たちは水産業や流通、レストラン経営など、海と食について座学とフィールドワーク、研修で学び、最終的にレストラン企画運営の全てを行います。
Chefs for the Blueが手掛ける、学生と一緒に海の未来を考えるプログラム。01Chefs for the Blueが手掛ける、学生と一緒に海の未来を考えるプログラム。02Chefs for the Blueが手掛ける、学生と一緒に海の未来を考えるプログラム。03

東京チームは、問題を手が届くサイズにまでブレイクダウンして、身近にある「当たり前を疑う」を課題に設定。例えば「旬」は、魚が美味しくなる時期を表すだけでなく、漁をしやすい時期を呼んだりもしていてわかりにくくなっていること。スーパーに並ぶ魚も昔はもっと多くとれていて陳列風景も変化しているだろうこと。そんな実は当たり前じゃないことに焦点を当てて考えていきました。
ポップアップレストランでは漁師や仲買人らとの交流から4品のメニューを考案。サステナブルな漁業に取り組む漁師から仕入れたスズキの前菜、低活用魚を利用したパスタなどを提供しました。

京都チームは、海についてもっと知りたいとお客さまに思ってもらえるように、「普段食べている魚がどんなものか再発見してもらう」ための料理とサービスを表現することに。料理に使った食材の漁の現状をわかりやすく伝えるメッセージ入りカードを作り、お客様にお渡しして好評だったようです。
漁師間で独自の資源管理がされている明石の鯛を使った前菜、料理への活用が難しい未利用魚を使った一皿など、4品が提供されました。
Chefs for the Blueが手掛ける、学生と一緒に海の未来を考えるプログラム。04

生産現場での出会いや多様なメンバーとの学びのなかで、将来を左右する成長も

各チームに参加したのは、高校生、専門学校生、大学生を対象に募集した計16名。選考時に考慮したのはメンバーの多様性で、料理人志望、水産系アカデミア志望、それ以外のカテゴリーで2〜3名ずつというバランスで構成されました。

「畑違いのメンバーが集ったので反応や感想にも違いがありました」と佐々木さん。
食材としての知識はあるものの水産業や流通の背景までは知らないメンバーもいれば、逆に水産や生態を学ぶ学生にとってはレストランの実情や料理、食材としての魚の可能性については未知の分野。
ブレイクタイムでのディスカッションで、お互いの知識を補完し合うように学びを深めていた様子です。学生たちはスポンジのように知識を吸収していったとか。
またプログラム後半の「お店でどういうものをつくるか」コンセプトづくりを行うフェーズでは、しっかり意見のぶつかり合いなども経験していました。
生産現場での出会いや多様なメンバーとの学びのなかで、将来を左右する成長も_01

このプロジェクトに参加して考え方が変わった、進路選択を左右する経験だったと言ってくれる学生もいたそうで、いくつかエピソードを紹介いただきました。

「興味深い変化を見せてくれたひとりは、京大で水産学を学ぶ学生。プログラム参加前は、『漁業は“狩猟”であり将来的には天然資源の利用はやめたほうがよい』という考えを持っていましたが、フィールドワーク中にふと『僕は漁師になるべきなのかもしれない』と呟いたそうです。それまで海から遠い立場で『正しい』と思う理想を述べていましたが、座学やフィールドワークでさまざまな人と会話し、水産業はとても複雑で、いろいろな『正しさ』があると気づいたと言います。水産研究の道を目指していますが、研究者になるにはいろんな側面を見ないといけないと。“生産の0番地”で漁師の立場に立つ自分を想像できたことは、大きな成長につながったと思います。
京都チームには夏の留学との二択で悩んだ末に参加を決めた高校2年生がいましたが、このプログラムで『知らないという恐怖』と『知ることの重大さ』に気づいたそうで、もともと目指していた鯨類の研究者から、いまは鯨類だけに限らず水産問題に関連した研究をしていきたいと自身の変化について話してくれました」
そんな変化や成長が見てとれたことも、手応えを感じたポイントだったそうです。
生産現場での出会いや多様なメンバーとの学びのなかで、将来を左右する成長も_02

あらためて3ヶ月間を振り返ってみると「世界でも初めての試みだったのではと思いますが、稼働や作業量などが計算しきれず、3ヶ月で実施するには学生にもスタッフにも負荷が大きすぎたという反省があります」と、まず改善点を挙げられました。

もっと考える時間を確保した設計にできるよう次年度に生かしたい、という佐々木さんですが、そんなハードなプログラムだったにも関わらず、学生たちからは来年度も第2期生のメンターとして関わりたいという声も多く寄せられているそうです。
「きっとやりがいを感じてくれたのだと思うし、プロジェクトが充実したものだったのだなと嬉しく思います。それぞれに悔いややり残したことがあったことも知っていますが、そんな学生たちがこのプログラムをもっと良くしたいと思ってくれたことが、我々の宝物です」

チームで運用してきたInstagramには今、そんな学生たち(東京チーム)の振り返りメッセージが掲載されていて、一人ひとりのリアルな思いが伝わってきます。ぜひ覗いてみてください。

関係した大人からも「希望を持てた」「来年も担当したい」と嬉しい声

周囲の反応を伺ってみると、ポップアップレストランへ訪れたお客様からも「応援したい」というたくさんの声が寄せられたそうで、なかでも「この取り組みに『希望を持てた』というメッセージをいただいたことが、とても印象的でした」と教えてくれました。
社会課題を解決する活動は世界中にありますが、とくに水産分野は崖っぷち感があり、状況が暗い。そこに第一歩をどう踏み出すか、若者がしっかり考えて明るく取り組む姿に希望を抱かれたとのこと。
若い世代が問題に向き合えるよう基礎を整える取り組みに、注目と期待が高まっているようです。
関係した大人からも「希望を持てた」「来年も担当したい」と嬉しい声_01
関係した大人からも「希望を持てた」「来年も担当したい」と嬉しい声_02

またメンターを務めたシェフたちからも「来年度も自分が担当したい」「手放したくない」といった感想があったとか。
これまでのイベントのようにシェフ自身が前面に立つのではなく、今回は完全に黒子、サポート役での参加でしたが「みなさん学生たちとプロジェクトを進めることにとても意義を感じていました。自分も考え方をゼロから見直す機会になるなど、自身でも学びが多かったようです」と充足感に包まれている様子を明かしてくれました。
関係した大人からも「希望を持てた」「来年も担当したい」と嬉しい声_03

「私自身の思いは当初から変わっていないのですが、この取り組みを長く続けて卒業生の母数を増やしていきたいと思っています。希望としては、社会に出てもコミュニケーションを継続して卒業生のネットワークを構築してもらいたい。10年続けたら卒業生は160名になりますが、漁業従事者約13万人に対して決して小さくない数です。水産や海を考える人が増えること、それが大きな動きになると思います」と今後の挑戦に思いを馳せていました。
実際に、すでに卒業メンバー同士でコンテストに出場したり、お客様からの誘いを受けてシンポジウムに参加するなどの動きもあるそうで、早い段階で実現しそうです。

日本人にとって海は“背骨”。海の豊かさは日本の食文化の根幹

THE BLUE CAMP以外にも、新江ノ島水族館でシェフと漁師と水族館でタッグを組んだディナーイベントの準備などに追われている様子ですが、水族館との取り組みは念願だったそうで、「水族館は地元の海や魚を知ることができる絶好のタッチポイントなんです。日本は水族館大国ですし、海の未来を考えるイベントを全国で開催したい。意外と地域の人は自分の海の状況を知りません。例えば地元の魚が流通しない構造があるとしたら正しい危機感を持てるように、タッチポイントである水族館と協力しながら伝えていきたい。THE BLUE CAMPで灯った“希望”のように、“楽しく伝える”ことができればと思っています」と意欲的。

そんな佐々木さんご自身についても、最後に伺ってみました。
「フードジャーナリストとして長年国内外の取材を続けてきて、日本の食文化がどれだけ優れているか、海産物の存在がいかに大きいかをよく理解しているつもり」と語る佐々木さんは、神戸大学法学部出身で、法務職からフードジャーナリストに転向した経歴の持ち主。現在は水産政策審議会に入り、有識者フォーラムにも参加されています。
「日本人にとって海は“背骨”なんです。海産物から取った出汁が食生活の絶対的な基本である国は日本だけ。もし、その日本料理の根幹を失うことになったら、どれだけアイデンティティの喪失になるかを知ってほしい」と警鐘を鳴らします。

残念ながら現在も海の状況は悪くなる一方。気候変動、温暖化など、資源管理だけでは解決できないことも多いのですが、それでも、やりつづけなければいけません。
「すぐにできることもあります。例えば消費行動を変えること。エコ認証の魚を購入するとか、減り過ぎている魚種や魚卵の消費を考え直してみるのもいいと思います。個人でできることを意識していきたいですね。
海プロでも食のプロジェクトが増えていて嬉しいです。未利用魚などの活用事例も多くありますが、その分類には『未成魚』を含めないなど、細かいことですが再生産や持続可能性への視点が必要なこともあらためてお伝えしていきたい。そうした持続性のある取り組みが充実していくことを楽しみにしていきたいです」と共感のエールをいただきました。

水産に携わる漁師やシェフ、さらにTHE BLUE CAMPの卒業生たちとも足並みをそろえながら、一緒に海の未来を変えていければと願っています。
日本人にとって海は“背骨”。海の豊かさは日本の食文化の根幹