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「海未来」のダイバーたちから海ごみの現状を子どもたちへ<助成事業者インタビュー>

「海未来」に集う関西のボランティアダイバーたちが水中環境保全活動に邁進中。

2023.09.07

「海未来」のダイバーたちから海ごみの現状を子どもたちへ<助成事業者インタビュー>

200名以上ものボランティアダイバーが登録し、近畿各地で水中清掃活動等に取り組むNPO法人海未来では、今年も「ダイバーと子どもたちによる海ごみ回収の取り組み」を、日本財団 海と日本プロジェクトの助成事業として実施中です。

これは、ボランティアダイバーたちには費用負担なしで水中清掃やサンゴの再生事業に参加してもらい、一般の方や子どもたちにも活動の一端に触れてもらうことで、海への興味関心を高めていこうという取り組みです。

水中清掃活動は団体の設立前となる2008年からスタートしていて、現在までに回収した水中ごみの総量はなんと約60トンにも及ぶそう。

活動は通常より透明度の悪い水中でバディ単位で行うため、一定レベルのダイビング経験値が求められるそうですが、
「一度海に沈んだごみは、ダイバーでなければ回収できません。ダイバー仲間を増やし、関連団体等との連携も強化しながら、これからは一般の方、とくに子どもたちに海の現状を知ってもらう活動にも注力していきたいと思っています」
という、ダイバーやインストラクター育成では世界トップレベルの経験を持ち、大学や高校で講師として現在もダイビング授業を行っている元公益社団法人レジャーダイビング協会理事、海未来の彦坂弘久専務理事事務局長にお話を伺いました。

関西エリアでボランティアダイバーを集めて水中清掃を展開中

そもそもボランティアダイバーによる水中清掃をスタートしたのは、彦坂さんが公益社団法人日本レジャーダイビング協会理事をしていた時に、公益財団法人日本釣振興会から釣りスポットの水中ごみ回収について相談を受けたことがきっかけだったそう。
その後、全国で展開した活動エリアを関西に絞り、釣り場だけでなく水中投棄ごみが多い海岸や湖川で幅広く環境保全活動を行うためにNPO法人海未来を立ち上げたのは2020年4月。ダイバーによる水中清掃を法人組織として計画的に行っているのは西日本では海未来だけだとか。

水中清掃の実施は海プロの助成事業も含め年間30回ほどで、主に近畿圏内在住の登録ボランティアダイバーから毎回、15名ほどの参加者を募っています。基本的にダイビング費用や交通費などダイバーへの費用負担は無料で、大阪府、京都府、滋賀県、和歌山県、兵庫県、三重県、福井県など近畿各海域や水域で活動中です。

「水中清掃となると透明度が悪いので、ある程度のダイビング経験が必要になります。海をキレイにしたいという環境意識の高いダイバーは多いのですが、ここでは参加条件に50回以上の潜水経験を求めていて、事故防止の観点から観光目的の初心者の参加はお断りしています」と安全面での重要な注意喚起も。本気でなければできない活動なのだと窺い知ることができます。
関西エリアでボランティアダイバーを集めて水中清掃を展開中-1関西エリアでボランティアダイバーを集めて水中清掃を展開中-2

実際に参加されているのは30代半ばから70代のベテラン層で、中心世代は40代。
「最初は不安でも、参加してみると充実感が得られるからか、ほとんどの人がリピーターになられています」
という言葉を証明するように、当初50人程度だった登録ダイバー数も現在は200名以上に増えました。

「水中でごみを拾っていくのは、達成感や社会貢献につながっている喜びが感じられて、のめり込んでいきやすいんだと思います。今ではたくさんのダイバーの皆さんに参加してもらっていますが、今後の課題は、どれだけ一般の方や子どもたちに水中のごみが多いということを知っていただくか、だと思っています」
そこで今年注力しているのが、一般の方を対象にした陸上でのごみ拾い活動。ダイバーたちが水中清掃をする際に周辺エリアでごみ拾いを実施して、目の前で水中から拾われるごみの存在をリアルに伝えています。
関西エリアでボランティアダイバーを集めて水中清掃を展開中-3関西エリアでボランティアダイバーを集めて水中清掃を展開中-4

子どもたちとダイバーがタッグを組んでサンゴの再生を研究&観察

水中清掃活動とともに、豊かできれいな海を次世代につないでいきたいという願いから、海未来では失われつつあるサンゴの再生や調査研究にも携わっています。

発端は、ダイビング業界で顔の広い彦坂さんの元へ、関西大学や秋田大学の研究者から調査研究への協力依頼があったのがきっかけでした。
サンゴは電流を流すことで成長スピードが速くなるそうですが、ここでは陸上からではなく水中に発電装置を設置して、サンゴプレートに微弱電流を流す再生促進方法を実験しているそう。

最初の2年は研究者と取り組んでいましたが、2015年から一般の方と取り組むスタイルに切り替えて継続中です。
具体的には、台風によって折れてしまったサンゴを子どもたちが基盤に固定し、ダイバーが水中に設置していくというもの。水中生物を大切にする気持ちを養いたいと、取り付けた人の名札をサンゴにつけ、成長を見守っています。沖縄並みにサンゴ類が多い和歌山県の串本の海に、すでに500個ほど設置し、今も大きく育っています。

子どもたちにダイバーとの連携作業を通じて、地元の水中生物の様子に興味を持ってもらうことが狙いですが、今後はサンゴだけでなく海藻類の再生にも取り組もうと計画中。そのためにも水中作業ができるダイバーを増やして、環境保全活動の輪をさらに広げていきたいと意欲的です。
子どもたちとダイバーがタッグを組んでサンゴの再生を研究&観察-1子どもたちとダイバーがタッグを組んでサンゴの再生を研究&観察-2子どもたちとダイバーがタッグを組んでサンゴの再生を研究&観察-3

次の世代へ引き継ぐために。長く活動し続けられる仕組みを検証中

あらためて事業全体について振り返ってもらったところ、「一般の方は海の中のごみなど見る機会はないから、ほとんどの方は、水中から拾われたごみに驚かれます。
だからこそ、特に子どもたちから『海にごみがこんなにあったなんて初めて知った』『ごみは捨てないようにしないとならないと思った』といった声を聞くと、とても嬉しいですね」と彦坂さん。

12月には環境保全の普及啓発セミナーを開催予定ですが、他のイベントにもたびたび出展し、水中ごみや再生サンゴの展示などを行っています。その場で活動への参加申し込みなどもあり、大きな反響に手応えを感じているそうです。

「ただ、関連NPO、研究機関や大学などとの連携ができていない現状もあるので、同じ目的意識を持ったところ同士、情報交換やタイアップも強化していきたいですね。さまざまなつながりを結んで、今後も長く継続して活動していける仕組みづくりを行っているところです」と、自らの仕事の集大成にと、次世代につないでいく意識が一層高まっている様子。
次の世代へ引き継ぐために。長く活動し続けられる仕組みを検証中-1
「海外でも、海にプラスチックごみなどが浮遊していて、どんどん流れ着いている光景を目にします。潜れば潜るほど、環境に敏感になっていく。キレイな海に潜りたいし、魚や生き物も増えて欲しい。いつまでもそういう海であってほしいと思うので、仲間も含めて何ができるかを考えています」
と尽きない海への思いを聞かせてもらいました。

リアルな海の現状を見ているダイバーたちにこそできること、伝えられることを強みに、どんな未来が描かれていくのか、次のアクションにも期待が高まります。
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